長期投資家・白蜜の思考回路

投資メインで政治からゲームまで、なんでもアリな雑食ブログ

「日本のデフレは緊縮財政が原因」は本当か?

こんばんは、白蜜(しろみつ)です。

 

今回はタイトルの通り、日本の財政について書いてみます。

ここ数年はいわゆる「MMT理論」を叫ぶ人が増えてきたこともあり、やや手垢のついたテーマかもしれませんが、少し事実を整理してみたいと思います。

 

今回使用している資料は昨年末に作成したものを使います。少し古いように感じるかもしれませんが、主旨・論旨は変わらないのでそのまま使います。

また、これから記載する内容は僕(白蜜)の個人的意見というものではありません。「ただ数字(グラフ)を素直に解釈すればこのような結論になりますよ」という事実の指摘と言った方がいいのかもしれません。なので賛成か反対かというような視点ではなく、素直な心でグラフを見ていただければと思います。

 

まずはこちらの図をご覧ください。

 

少し見づらいかもしれませんが、2000年から2020年までの需給ギャップと実質GDP変化率とを示したグラフです。

(データ出典:内閣府HP、日本銀行HP)

 

需給ギャップの説明をし始めると長くなるので、詳しく知りたい方は「需給ギャップ」や「GDPギャップ」、「産出量ギャップ」などで検索してみてください。

ついでに「潜在成長率」または「潜在産出量」でも検索すると話が分かりやすくなると思います。

(TwitterでのリプライやDMなどで問い合わせいただければ、可能な限り解説させていただきます。)

 

話を戻しますが…

(乱暴なくらい簡単に言ってしまうと)一般的に「実際のGDP」が「潜在産出量」を下回ると経済にデフレ圧力がかかり、物価が下がると言われています。

工場では商品をたくさん作っているのに、買いたいと思っている人が少ないので価格を安くしないと売れないというイメージでしょうか。

 

上のグラフは需給ギャップの推計値と実際のGDPの変化を比較したものです。

 

まずは左側の丸印で囲んだ部分を見てください。

2001年から2006年くらいまでですね。

この頃は2001年に誕生した小泉政権がそれまでの政権が行っていた税金の無駄遣いを是正しようとした結果、需給ギャップ&実際のGDPのどちらもマイナス圏に沈んでいます。

しかし、需給ギャップは2003年半ば頃まで▲2%あたりで推移しているのに実際のGDPは2002年の前半に大きく回復しています。その後、2006年頃まで需給ギャップの回復が緩慢である一方、実際のGDPの成長率は2%付近で安定しています。

 

続いて、右側の丸印を見てください。

2015年から2018年頃までの推移を見ると、需給ギャップがゼロ付近またはマイナス圏にあるのにGDPが2%程度成長していたり、需給ギャップが2%程度のプラスであってもGDPがマイナス成長になっていたりしています。

 

これ以外にもリーマンショック、東日本大震災などがありGDPが乱高下している期間がありますが、どの期間を見ても需給ギャップとGDP成長率との間に相関関係があると判断できるようなグラフにはなっていません。

 

GDPが持続的に成長しない理由としては米国の金利や景気などの対外要因や規制緩和がなかなか進まないこと、国内政治の混乱や停滞、労働市場の硬直化、生産性が伸びていないことなどいくつも列挙することは可能だと思いますが、複合的な要因によるものだと思われるのでなかなか定量的に(=明確な数字やグラフで)説明することは難しそうです。

そのような白蜜個人の意見はまた別の機会に書くことにします。

 

まとめると…

少なくとも過去のデータを見る限り

「日本のデフレは緊縮財政が原因」

という主張には説得力がないと言わざるを得ない。

ということになります。

 

最後に…

TFP(全要素生産性)のグラフを示して終わりにします。

 

全要素生産性とは、生産量の増加のうち労働&資本の増加では説明できない部分のこと。

ざっくり言えば、「労働者の数も生産に使う機会も以前と変わっていないのに、なぜか生産量が増えました!やったね!!」みたいな感じかな?

(ざっくりすぎたかも(笑))

 

一般的には技術革新や業務の効率化などが例として挙げられることが多いですね。

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(データ出典:日本銀行HP)

 

1983年以降の推移を見ると、80年代には労働および資本の投入量が増えていたため潜在成長率も高かったのですが、バブル崩壊後はどちらの投入量も頭打ちとなり潜在成長率が1%以下に下がっています。

全要素生産性、潜在成長率がともに低下傾向にあるため、実際のGDP成長率が大きく増加しないのも頷けます。

また、全要素生産性が長期的に下がっているということは「あれ?財政支出を増やしたのに、思ったほどGDPが増えないなぁ?」ということになります。基礎経済学用語で言えば乗数効果が低下しているということですね。

 

これら2つのグラフを見る限り

日本の長期的なデフレ(orディスインフレ)の主要な原因が緊縮財政を続けたためだと結論づけることはできない。

また全要素生産性が長期的に低下傾向にあるので、財政政策が効きづらい社会になっている。

人口が減少し始めた我が国においてGDPを成長させようとするならば、全要素生産性を高める必要がある。

ということになります。

 

では、全要素生産性を高めるために何をすべきか?

これについては人によってさまざまな意見があると思いますが、少なくとも「財政支出を大幅に増やせば日本経済は復活する」と言った意見がいかに的外れなものであるかということはお分かりいただけたと思います。

 

長くなりましたので今回はここまでといたしますが、ネットニュースやSNSに溢れる「シンプルで耳障りのいい」主張に対して批判的に考える一助になれば幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。