長期投資家・白蜜の思考回路

投資メインで政治からゲームまで、なんでもアリな雑食ブログ

【企業分析】4382 HEROZ(情報・通信業)

こんばんは、白蜜(しろみつ)です。

 

今回はHEROZ株式会社について、紹介と分析とを行います。

ちなみに僕はHEROZの株式を保有しており、損切りタイミングを逸してしまったので塩漬け中です。

現在、マイナス40%くらい(涙

 

HEROZはAIソフト開発会社であり、事業内容は一般消費者向けサービス(BtoC)と企業向けサービス(BtoB)とに分かれます。

先日、バリオセキュア株式会社との資本提携を発表しました。発表後にバリオセキュアはストップ高となりましたが、HEROZの株価には目立った動きはありませんでした。

 

竹中工務店、東洋エンジニアリング、SMBC日興証券、マネックス証券、バンダイナムコゲームスに対してサービスを提供しているようですが、それぞれの売上高等は不明です。

 

売上高、営業利益の年次推移は以下の通り。

f:id:w_honey:20210919232103j:plain

2017→2018年にかけては売上高、営業利益ともに大きく増加し、営業利益率も約30%もあるという素晴らしい決算でした。しかし、その後は両社ともに増加ペースが鈍化し、2021年4月期決算ではついに営業利益が減少に転じました。

 

【HEROZの良い点】

①高い技術力

2013年にHEROZの将棋AI現役プロ棋士に勝利するなどAIの品質としては高いものがあると思われます。

 

②BtoCサービスによる安定したキャッシュフロー

2021年4月期決算においても、売上高の約56%を将棋ウォーズ等のBtoCサービスが占めており、BtoCサービスで得た資金をBtoBサービスの研究開発に回すことができる。

 

【HEROZの悪い点】

①売上高が頭打ち、かつ営業利益率が年々低下している。

AIの市場規模自体は年々増加していますが、競合する企業の増加により売上高の伸び率が年を追うごとに低下している。AIに関するスキルを持った人材を多くの企業が獲得したがっており、人件費も高騰を続けている。

 

②IRに消極的

HEROZのホームページを見ると一目瞭然ですが、四半期決算に関わること以外のIRがほとんどありません。

投資家向けに情報開示を積極的に行う姿勢はほとんど見られないと言っていいでしょう。

 

③ 潤沢「すぎる」内部留保

年間の売上高が15億円台であるのに現預金が55億円以上もある。決算説明資料では「中長期的な成長戦略を実現するための投資(人材関連費用、サーバ等への投資資金(外部サーバを含む)、当社事業に応用可能な周辺技術を有する企業等への投融資資金等)に順次充当しております」と記載があるが、2020年4月と2021年4月とを比較してもほとんど変化がなく、資金が活かされないまま企業内部にため込まれている状態である。

また、「中長期的な成長」との記載がありますが、「中長期」とはどのくらいのスパンを想定しているのかが全く不明。今の先行投資が報われるのが10年先あるいは20年先かもしれない。

 

④上場企業としての認識が甘い

2021年6月に出したIRで売上高減少の理由を「新型コロナによる商談機会の減少」と説明しました。いわゆるIT系の企業では新型コロナの影響下でもZoomなどのツールを使うことで売上高や利益を増加させているところが多いです。そういう意味ではとても稚拙な理由だなと感じます。

また、同IRの中で費用増加の原因を「人材採用の強化やサーバーの購入」と説明しています。人件費の増加は今年だけではなく来年以降の費用増加にも直結することですし、サーバーも耐用年数を考えると少なくとも数年おきに買い替える必要があるものです。そのようなことを考えると、HEROZは今後コロナ危機が去って売上高が増加しても利益はなかなか増えないと考えざるをえません。

 

また2021年8月に出したプレスリリースで共同CEO制の導入を発表したのですが、その理由として共同CEOになった高橋氏、林氏について「大学同窓生であり、新卒同期入社、そして当社を共同創業する中で強固な信頼関係を育んでいる」と説明しています。この文言を見た時、正直言って呆れてしまいました。大学のサークル感覚で企業経営を行っているのだと痛感しました。

 

このような点を勘案すると、HEROZは上場企業として株主等のステークホルダーへの説明責任や利益を還元する責任について全く認識していないと言わざるをえません。

 

 

 

【まとめ】

HEROZはAIの分野では高い技術力を有しており、BtoCおよびBtoBサービスを展開しているため安定したキャッシュフローを研究開発に回すことにより高い成長が期待できる企業です(でした?)。

 

一方、上場企業としてはIRに消極的、資金効率が悪い、ステークホルダーへの責任を果たしていないなどの致命的な欠陥が見受けられます。

CEOが研究開発のプロであるが経営のプロではないというところがHEROZの最大の弱点と言えます。

 

投資先として見た場合には、外部から経営に長けたプロフェッショナルな人材をCEOとして招聘するなど、コーポレートガバナンスに関して劇的な変化が見られるまでは投資を控えるのが賢明だと考えます。

 

【AI開発市場について】

「AI」という分野は非常に将来性があり、投資テーマとしても人気ですが、HEROZへの投資を通じて僕が感じたこととしては…

ベンチャー企業が大きく利益を伸ばすことは難しい

ということです。

 

この産業は非常に労働集約的であり、売り上げの拡大とともに多くの人材を採用する必要があります。しかも今は人材が不足しており給与水準も高騰しています。

最終的にはNTTデータや富士通のような大手企業が各ベンチャーを買収し覇権争いをしていくのではないか。そんな気がしています。

 

AI分野への投資を考えた場合は、中小企業で大きな利益を狙うよりも大企業への投資を検討した方がいいと長期投資家である白蜜は考えます。

 

以上です。

今回は少し私情が入りすぎたかもしれません(笑)が、これから少しずついろんな企業について分析してみたいと思います。

 

次回もぜひごらんください。